システム開発で意図しない完成品が納品される可能性

システム開発において、発注者が意図していたものと異なるシステムが納品されることは珍しくありません。 これは「発注ミス」や「開発者のミス」という単純な理由ではなく、 システム開発のプロセスに内在する問題によって起こることが多いとされています。

1. 1. 意図しない完成品が納品される理由

   1. (1) コミュニケーションギャップ

      発注者と開発者では専門知識が異なるため、要求を伝えたつもりでも意図が正しく伝わっていないことがあります。

      例: 「使いやすい画面」と伝えても、発注者の考える「使いやすさ」と開発者の解釈が異なる。

   2. (2) 要件の不明確さ

      発注者が求める仕様が曖昧なまま開発が進むと、開発者が独自の解釈で補完することになり、意図とズレる可能性があります。

      例: 「データを整理できる機能」とだけ伝えた場合、どのような整理方法を想定しているかが明確でない。

   3. (2) 開発途中の要件変更

      システム開発は長期間にわたることが多く、その間に要件が変わることがあります。 要件変更が適切に管理されないと、発注者の意図から逸れたシステムになる可能性があります

      例: 開発途中で新しい機能を追加したが、発注者と開発者が想定している既存機能との整合性に齟齬が発生した。

2. 2. 意図しない完成品を防ぐための対策

   1. (1) 雲一つない要件定義を目指して

      できるだけ具体的な要件を文書化する。

      画面レイアウトや操作イメージをワイヤーフレーム（簡単な画面設計）として共有する。

   2. (2) 定期的な確認とフィードバック

      開発の各フェーズごとに成果物を確認し、発注者の意図と合っているかフィードバックを行う。

      プロトタイプ（試作品）を作成し、実際に触りながら認識のズレを防ぐ。

   3. (3) 風通しのよいコミュニケーション

      開発者と発注者の間で、定期的にミーティングを実施する。

      IT用語や専門用語は定義をチームで共有、誰でも理解できる状態を作ることを心掛ける。

   4. (4) 変更管理の徹底

      途中で仕様変更があった場合、その影響範囲を明確にし、改めて合意を取る。

      変更履歴をドキュメント化し、何がどう変わったのかを追跡できるようにする。

3. 3. 「晴れSYSTEM開発」の実現へ

   システム開発において、意図しない完成品が納品されるのは発注者と開発者の間に認識のズレが生じることが主な原因です。 しかし、事前の要件定義を明確にし、適切な確認とコミュニケーションを行うことで、リスクを最小限に抑えることが可能です。

   システム開発を成功させるためには、発注者と開発者双方が「伝えたつもり」ではなく、 「正しく伝わっているか」を常に意識しながら明瞭な要件定義と透明なやり取りで、 リスクを隠してしまう雲のような存在を排除した、快晴のような開発体験を実現することが大切です。